【全6巻】年下攻めBLの代表作『テンカウント』に沼落ち【感想】

画像:夜のカフェ 文字:『テンカウント』「執着しているのはどちらか。」 「沼落ち本棚」 感想記事

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ーーー俺が「治りたくない」と思った理由、あなたはわかりますか。

この場面を見た時、ふと、城谷は潔癖症が治るのが怖くなっていたんじゃないかな、と思いました。なぜなら完治したら黒瀬がいなくなってしまうから。

『テンカウント』は、映画化もされた『セブンデイズ』の作者である宝井理人先生が、儚げで繊細な画風と清楚な作風からガラッと変わった「濃厚なラブシーン」を描写したことで話題となったBL漫画です。累計280万部以上突破という偉業を成し遂げたこの作品は、これまで宝井先生の作品に触れていなかったBLファンや少女漫画ファンまでをも惹きつけました。

全6巻という長編BLですが、2人の行く末を見守った後に残るのは「歪んだ2人が人として向き合えた」感動とこの作品を生み出した宝井先生への感謝でした。

ひとつだけ先にお伝えしておくとこの作品は1巻だけでは面白さが伝わりにくいです。1巻だけで判断せずにぜひ最後まで読んでほしいです。

あらすじ

この世にあるものはすべて汚い。

そう思っていた潔癖症の城谷の孤独な心を解いたのは、1人のカウンセラーでした。

潔癖性の社長秘書「城谷」は偶然出会ったカウンセラーの「黒瀬」から、潔癖性を克服するための個人的なカウンセリングを受けることになります。抵抗がある行為を10個選び、黒瀬と一緒に1つずつクリアする療法を進めるうち、次第に惹かれていく城谷ですが…

「黒瀬くんといると、少しだけ普通の人になったみたいに錯覚する」。城谷はどういう感情でそういったのか。無愛想なカウンセラーと潔癖性の社長秘書の繊細な恋の行方はどこへ行くのか。

この作品が刺さる人の特徴

この作品は長編BLということもあり、「物語」としてBLを読むのが好きな人に刺さると思います。その中でも次の人には特におすすめしたいです。

「欠けた人間」の恋愛が好きな人

潔癖症の城谷とカウンセラーの黒瀬は、2人ともどこか歪んでいます。例えば、城谷は幼い頃の経験から自分を「気持ち悪い存在」だと思い込んでおり、黒瀬は両親に無関心に育てられ自分を見てくれる人を探し続けているという背景があります。

王道の甘々カップルのような傷の無い人間の恋愛ではなく、欠けた部分を抱えたまま、それでも誰かに受け入れてもらおうとする2人の話が好きな人は、心臓が締め付けられるほど好きな物語かと思います。

焦ったい展開が好きな人

「イヤだけど、ムカつくけど、会いたい」

城谷から黒瀬への好意は早い段階で見えてきますが、黒瀬がどう思っているかがいまいち分かりません。そのため城谷も読者もずっともどかしい状態が続きます。

この焦ったさがどこまで続くのか、最後の結末はどうなるのか、そんなじれったくて先の展開にドキドキするのが好きな人にはたまりません。

重い「執着」が好きな人

側から見ていると、人付き合いが苦手で繊細な城谷が黒瀬に「捨てないで」とすがっているように見えるかもしれません。

ですが実は黒瀬の方が捨てられることに恐怖を覚えているから強引に近づいてしまうんです。それは黒瀬の幼いころに出会った人との別れが関係しています。

その人とのかかわりは、成長していく中でもかなり心の傷となっていて、セラピストになったのも心の傷を解消するため。城谷は、その人と似ていたからカウンセリングをしようと声をかけたんです。

黒瀬の話は、第5・6巻で出てくるので、ぜひその目で執着の理由を確かめてください。

登場人物紹介

『テンカウント』は潔癖症の「城谷」とカウンセラーの「黒瀬」を中心に話が進んでいきます。

城谷 忠臣(受け)

潔癖症で他人との接触ができず、手すりにも触れられないほどです。生きづらさを抱えながら仕事をこなしており、かなり繊細で情緒不安定。

幼い頃の父親との記憶と植田から「気持ち悪い」と言われたことから、自分は気持ち悪い存在だという思い込む。気持ち悪い自分は周囲も汚くしてしまうと潔癖症になってしまった。

黒瀬 陸(攻め)

学生かと思うほど若く見える年下のカウンセラー。城谷に対して常に敬語で話しながら迫ってくる「敬語攻め」です。

クールで無愛想ですが、城谷のカウンセリングをしてくれます。幼い頃の家庭環境や出来事から、クールな外見の裏にどろっとした執着心を隠しており、自分を見てくれる人・受け入れてくれる人を探し続けています。かつて潔癖症の青年と出会い、その人を失った経験が城谷との関係の出発点になっているとか。

倉本社長

城谷の勤める会社の社長。城谷は社長秘書として働いています。城谷の潔癖症に理解があり、城谷にものを渡すときはハンカチを使ったりと気遣ってくれます。

三上 健

城谷の同期で営業部の社員。城谷のことを理解してくれる数少ない友人で、治療にも協力してくれます。

「テンカウント」とは何か

「テンカウント」とは、黒瀬が城谷の潔癖症を治すために設定した10項目のプログラムです。

城谷にとって「抵抗がある行為」を10個挙げて、抵抗の少ない順に2人で実践していきます。これを選ぶとき城谷は10個目を書けませんでした。10個めは、城谷にとって心の傷でもあり出会って間もない黒瀬に明かすことができなかったからです。

プログラムを進むほど近づいていく2人の関係は、進むほど終わりに近づいていく。この矛盾が城谷を縛り続けます。

タイトルの「テンカウント」は、ボクシングのダウンカウントであり、2人の関係のカウントダウンではないでしょうか。

一番好きな場面:6巻、黒瀬の本音を聞いてほしい

6巻では、ようやく黒瀬が本音を話します。

「俺のことを捨てないで」

側から見ていると城谷が言いそうなセリフですが、ずっと受け入れてくれる人を探してきた黒瀬が、城谷にだけ見せた本音です。話し終えた後、城谷が黒瀬の顔を両手で包んで何か言おうとしたとき、アラームが鳴り何も言えなかった城谷。このもどかしさがたまりません。

その後2人で出かけた先で、城谷は泣きながら告白します。

できないことの10項目が埋まらなければ、ずっと一緒にいられると思っていた。黒瀬のそばにいたい。

それを聞いた黒瀬も思わず涙をこぼします。それはようやく受け入れてくれる人を見つけた、そういう泣き方に見えました。

報われる恋が好きな人はこの作品を読んでほしい

好きの反対は無関心だとよく言いますよね?

城谷と黒瀬の関係が続いたのは、2人がお互いにずっと関心を持ち続けていたからだと思います。傷つくことがあっても、離れることができなかったんです。最初は心に傷を持つもの同士が、失ったものの代替として求めあっていたけれど、最終的に代わりではなく1人の「人間」として向き合う過程を繊細に描いているのがヒットの理由なのかと思いました。

夜明け前って1番暗い時間だそうです。でも絶対日は昇って朝がきます。そんなしんどいけど最後はハッピーエンドが好きな人はこの作品が好きだと思います。

『テンカウント』はどこで読めるの?

『テンカウント』は、年下攻めBLの代表作として知られる全6巻完結の作品。繊細な画風と潔癖症、濃厚なラブシーンが組み合わさった、他にはない読み応えのある作品です。

城谷と黒瀬は最後、お互いを「代替品」ではなく「この人」として選び直します。それを見届けたとき、タイトルの意味が分かってきます。読み終えていっぱいの執着と萌えを浴びてください。

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